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ジョン・ウェドン監督
『アベンジャーズ』

それが娯楽映画ということ

文=

updated 08.10.2012

アメコミ・ヒーローもののファンならば、キャプテン・アメリカ、ハルク、アイアンマンといったヒーローたちが、ひとりまたひとりと集められ、同じ画面に映し出されてゆく段取りに、すでに興奮してしまうのだろうが、彼らにさほどの思い入れを持たない者ならば、いつになったら物語が本格的に起動するのかと、やや焦れる気分で待つのではないだろうか。かつて『エヴァ』TV版をはじめて見たときのように。

しかしながら、心配はいらない。そうやって集結したヒーローたちが、それぞれの勝手な理由によってバラバラになりかけたりしながらもようやく意志を結集させる時が訪れ、天空からニューヨークに降り注いでくる圧倒的多数の敵を前にして、背中を合わせて戦い始めるシーンが否応なくやってくる。その瞬間に接した者は、誰もが鳥肌を立てながら快哉を叫ぶことになるだろう。そうなってみると、なるほど前段の積み重ねがすべて生きていたということ気づくことになる。

生真面目なキャプテン・アメリカと、アスペルガー的にわがままなアイアンマンが口論をしつつ団結し、怒ると制御不能の怪物と化すハルクや、バカデカいハンマーで雷を操る“神の国の戦士”ソーといった連中がそこに加わると、文字通り理想の“アメリカ合衆国”がそこに姿を現すということか。

その様子と、それを興奮しながら見つめる己の姿を眺めるにつけ、恥ずかしいまでに幼稚で、バカバカしいまでにナイーヴなこの連中は、それ故にこそヒーローであるし、そういうヒーローこそが必要なのだと、改めて理解することになるだろう。現代社会における善と悪、ヒーローとヒールなどといったものについての生真面目な考察など要らないのだ。

だからどうということもないのだが、それが娯楽映画ということほかならない。

☆ ☆ ☆

『アベンジャーズ』
8月14日(火)3D・2D公開!
TM & © 2012 Marvel & Subs.

□ オフィシャルサイト
http://disney-studio.jp/

初出

2012.08.10 09:30 | FILMS