第二次大戦終結間際に月へと脱出していたナチスの残党が、2018年、満を持して地球征服のために降下をはじめるというお話。そのきっかけとなるのが、46年ぶりに月面に降り立ったアメリカ人宇宙飛行士との遭遇。
どこかで聞いたことがあるような気はするが、具体的には思い出せない。だが秀逸な企画とはそういうものなのだ。決して誰もがはじめて見聞きするものではない。ほんとうに斬新なものは誰にも理解されることなく終わるものなのだから。
そういうわけで、あとはどれくらいの達成度で映像化されているのだろうかという興味でこの作品を見始めるわけだが、なにしろ自主映画出身の監督が、一般のファンからのカンパをも募って作り上げたと聞いているので、あまり期待値は上げないでおくことにする。ところがあにはからんや、ナチスたちの作ったスチームパンク風巨大建造物の数々といい、まったくもってアリのレベルというか、結構良くできている。特に美術造形は、かなり目を楽しませてくれるのだ(とはいえ、プレスによれば総製作費7億5千万円くらいで、その内カンパによって積み上げられたのが約1億円だというので、日本映画の基準からすればそもそも超大作なわけだが)。
そういう意味で、最後の最後まで破綻することなく出発点にあった論理をとことん展開していった先を見せようとしているところも魅力的。唯一残念なところがあるとすれば、そうした隙のなさから、全体としてはわりと生真面目な印象を与えられる点くらいだろうか。だがそれもまた狙いの範疇内であるようにも見えるし、充分に楽しませてくる力を持った映画なのである。
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『アイアン・スカイ』
9月28日(金)より、TOHOシネマズ六本木ヒルズほか全国ロードショー!!
(C)2012 Blind Spot Pictures,27 Film Productions , NewHolland Pictures.ALL RIGHTS RESERVED.
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ビハインド・ザ・シーンはアートディレクターの箭内道彦さんです!
初出
2012.09.28 17:00 | FILMS