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事ほど左様に、「誰が理不尽」だとか「何が悪い」という図式が単純に示されることがない。腹立たしいほどに不条理だが、何をどうすることもできないし、何に向かって怒りを向ければ良いのかもわからない。「あそこでこうしたらよかった」というターニングポイントが明示されることもない。因果は錯綜し、もはや「大災害の記録」の範疇を大きく逸脱している。「この世界は理不尽なのだ」としか言いようのないところにまで、カメラは到達している。
一方で、野に放たれ、駆け回る馬たちの全身によろこびが満ちあふれていることはわかる。空も青い。
こうしてこの短いフィルムは、たしかに世界に触れたという体験の記憶を我々の身体に残す。なるほど、こういうのを面白いというのだ。
これはひとえに、作り手=見る者=監督の持つ、判断不能の宙吊り状態に留まることのできる、あるいは言語化できぬものを言語化せぬまま抱えておくことのできる強さが故に可能となったことだろう。
それならば、『相馬看花』も面白くないわけがない。今さらながらそう感じ、作品に対して恥じる気持ちを身体に刻みつけながら、見ようと心に決める。
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『祭の馬』 12月14日(土)よりシアター・イメージフォーラムにてロードショー、ほか全国順次 公式サイト http://matsurinouma.com/ (C)2013記録映画『祭の馬』製作委員会 |
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初出
2013.12.06 09:00 | FILMS