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コテコテでイイ顔

ディン・シェン『ポリス・ストーリー/レジェンド』

文=

updated 06.02.2014

「ポリス・ストーリー」と銘打たれているが、『ポリス・ストーリー/香港国際警察』シリーズの物語とは関係がない。むしろ、「ひとりの警官の物語」というニュアンスに近く、悪者とど派手なアクションを繰り広げるのではなく、コテコテな人間ドラマをじっくりと丁寧に、しかもわかりやすい意味で“技巧的”に見せていくという、意外といえば意外な「ジャッキー生誕60年記念」作品。
冒頭、傷だらけのジャッキーがこめかみに銃を押し当て、引き金を引くところから映画は始まる。そこから時間は逆戻りし、ひとりのしょぼくれた刑事(ジャッキー)が娘を訪ねて大都市の歓楽街にある一軒のクラブにやってくるところで、この映画の物語の幕が開かれる。

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どうやら娘とは良い関係にないらしく、そのまま父娘のドラマが進行するのかと思った途端に、そのクラブのオーナー自身(リウ・イエ)の手によって施設が封鎖され、刑事を含む客の全員が人質となる。もちろんジャッキーは巧みに拘束から逃れるので、なるほどここから『ダイ・ハード』がはじまるのかと安心しかけた矢先、どうやらすべての源には5年前のちょっとした(だが人死にの出た)事件の因縁があるらしいということがわかりはじめる。そこからは、食い違う証言の数々によって、異なった様相を見せる現実の姿が次々畳みかけられるのだが、当然『羅生門』のような不確定性の中に映画が彷徨い込むことはなく、次第に暑苦しいまでの侠気と人間のドラマが沸点に向けて盛り上がっていく。その過程でジャッキーはどんどんボロボロになり、冒頭のシーンへと至る。

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要するに、意外というのは密室会話劇としてほとんど舞台化も可能であるように見えること、技巧的というのはフラッシュ・バックに次ぐフラッシュ・バックで時制を行きつ戻りつしつつ、視点を変えてゆくという手法で徐々に全体像を見せるという作劇スタイルであること、コテコテな人間ドラマというのは、それらすべてがあくまでドストレートな浪花節に奉仕しているということなのであった。

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当然のことながらプロダクションとしての質は極めて高いものの、主演がジャッキーでなければおそらくかなり退屈な映画になっていただろう。だが、アクション・シーンやギャグの数は少ないが、紛れもないジャッキー映画である。楽しめないわけがない。それどころか、きっちり役柄に融合した初老の刑事のイイ顔に、ほろりとさせられるだろう。

公開情報

6月6日全国ロードショー
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