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まったくもって、楽しい

ジョナサン・ミロ+カリー・マーニオン
『ゾンビスクール!』

文=

updated 02.10.2016

たしかに、日がな一日ガキどもを相手にしていると「ぶん殴ってやろうかな」と感じる瞬間が誰しもあるのだろう。ホラー映画の定番のひとつになっているくらいなのだから。最近でいえば、珠玉の小品『ババドック』(ジェニファー・ケント監督/14)がそれだった。子育てに疲れた親の妄想なのか、ほんとうに魔物がやってきたのか、きわめて繊細かつ丁寧に撮られているので、どちらとも取れる。どちらとも取れるのがホントに怖ろしいというやつだ。

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一方、ガキどもの邪悪さを繊細さとはまったく無縁に思いっきり直截開放したのが、この作品である。得体の知れない気味の悪いモノが混ざったチキンナゲットを感染経路として突如小学生たちが凶暴化、教師たちにかじりつき、手足を引きちぎり、腹をかっさいてはらわたを引きずり出し、それを振りまわして縄跳びに興じたりと大フィーバーする。

主人公のクリントは、製作にもクレジットされているイライジャ・ウッド演じるところの教師。小説家を目指して一度はニューヨークに移り住んだものの、芽が出ないまま実家に戻り、それでもまだ小説家の卵を気どる大人になれない痛々しい青年、というか、まあ、いつものイライジャである。

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代理教員として母校に出勤してみると、生徒たちは小憎らしい連中ばかりだが、幼なじみのルーシー(アリソン・ピル)とのおしゃべりは楽しい。だがルーシーは、元アメフト選手、現体育教師のウェイド(レイン・ウィルソン)とつきあっている。無神経で感じの悪いバカである。そのほか、オカマの美術教師トレイシー(ジャック・マクブレイヤー)、コミュニケーション障害のダグ(リー・ワネル)、といったキャラが出そろったところで“アウトブレイク”が発生、校内を逃げ回りながらガキどもを殺しまくることになる(当然、すでに死んでるわけだが)。

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ちなみに、リー・ワネルというのはもちろんジェームズ・ワンとともに『ソウ』シリーズを生み出したあの男で、この作品でも共同脚本と製作総指揮に名を連ねている。この映画をコメディ方向に振ったのは、この男のアイディアなのだそうだ。最終的にはエドガー・ライト『ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!』(13)風の展開を見せる。

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たしかに、イライジャをホビット呼ばわりするなどのセルフ・パロディをはじめ、いろんな目配せが詰め込まれまくっている。そのわりには作品としてやや薄い印象が残るのは、子どもたちをギッタンギッタンの目に遭わせるショットが少ないからかもしれないし、このあたりがメタ・ホラーの限界点なのかもしれない。とはいえ、ジャンル愛だけはみっちりと伝わってくるし、楽しくないかと問われれば、まったくもって楽しいとしか答えられない。

その愛が故に一般客からはキモがられ、ともすればうるさがたのマニアからバカにされることもあるのだろう。だがしかし、ヤスいプロジェクトとはいえ、自分の製作会社でこの手の“クズ映画”を作る心意気を買わないでどうするというのか。彼ら〈スペクター・ヴィジョン〉の次回作も楽しみにしたい。

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公開情報

(C)2014 Cooties, LLC All Rights Reserved
2月20日(土)全国にて開校!
〈池袋シネマサンシャインのみ2/13(土)より先行上映〉
提供・配給・宣伝: プレシディオ/協力:松竹
HP: http://zombieschool.jp/
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