少年たちは、巨大なコンクリート壁に囲まれた“広場(グレード)”の中で何年もの間生活している。毎月ひとりずつ補給物資と共に“新人”が送り込まれ、彼らはみな自分自身の名前以外の記憶を失っている。集団生活を営む彼らにはリーダーがいる。生存のためのルールもある。最近では少なくなったが、特に初期のころには命を落とす者もいたらしい。
コンクリート壁の外には広大な迷路がひろがっている。しかも壁は毎晩移動するため、迷路の形も変わり続けている。出入り口は日暮れと共に閉じるので、迷路を探索している“メイズ・ランナー”たちは夜明けと共に出発し、日暮れまでに帰還する。これまでに迷路内で夜を過ごして生き延びた者はいないとされている。
主人公トーマス(ディラン・オブライエン)は、最後から二番目の“新人”として“グレード”に送り込まれる。そして上述のような舞台設定を徐々に知っていくわけだが、この環境に“適応”し、どうにか築き上げた生活環境を維持しようとする“先輩”たちとは異なり、異常なまでの好奇心と衝動的な行動力によって、“グレード”に変化をもたらしはじめる。
そこへ、最後の“新人”(にして唯一の女子)テレサ(カヤ・スコデラリオ)が到着、これ以上補給物資は届かないことが明らかになり、いよいよ少年たちの生活の表面上の安定にも終焉が訪れる。つまり“グレード”の外へ、さらには迷路の外へと、少年たちは行動をはじめるのである。
もちろん、少年たちがなぜこんなところに、どんな目的で閉じ込められているのかといったあたりの種明かしに、驚きはないだろう。これが外部へと向かう物語の第1章だとすると、第2章以降の“外部”のありかたもおおかた想像がつく。
それでもこの映画を楽しめてしまうのは、あまりにも“今風”の欠けた、『十五少年漂流記』を思わせる古典的な“少年”ばかりで登場人物が構成されていることと、そんな彼らが巨大迷路の中心に閉じこめられているという状況の単純さからなのではないかと、まずは感じる。
また、少なくとも第1章では女子はテレサだけなので、よけいな痴話げんかで物語が停滞することもない。もちろんこの事実は、“なんとなく地味”というこの映画の印象をもたらしもするのだが、地味でも少年たちがサヴァイヴしていってくれたらよいと思う。
公開情報
(C) 2014 Twentieth Century Fox Film
5月22日(金)TOHOシネマズ 日劇他全国ロードショー!
オフィシャルサイト:http://www.foxmovies-jp.com/mazerunner/
配給:20世紀フォックス映画