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ハリウッド映画の定石換算三本分以上!

ダンテ・ラム『激戦 ハート・オブ・ファイト』

文=

updated 01.22.2015

物語はこれ以上にないほどの直球。かつてはボクシング・チャンピオンの栄光を極めながらも驕る心に負けて八百長に関わり、今では借金取りに追われる生活をしている中年男ファイ(ニック・チョン)。裕福な家庭に生まれ育ったにもかかわらず、父の破産により最底辺にまで転落した真面目な青年スーチー(エディ・ポン)。息子を事故で死なせ、夫にも去られ、精神の均衡を失った母親クワン(メイ・ティン)。幼いながらそんな母親を支え続ける少女シウタン(クリスタル・リー)。この四人がどん底から這い上がるために、足掻きまくるというお話である。

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ファイは香港を追われ、マカオに渡っている。スポーツ・ジムの雑用係という職を得、安下宿としてクワンとシウタンの家に間借りすることになる。一方スーチーは、自暴自棄に陥った父親を立ち直らせるため、270万ドルの優勝賞金を目指してMMA(総合格闘技)のマッチ「ゴールデン・ランブル」出場を決意する。そのスーチーのコーチを務めるなりゆきとなるのがファイで、そのおかげで敗残者として無気力に生きていた彼自身の人生にも張りが戻ってくる。さらには、それに比例して病んだクワンや警戒心の強いシウタンとの間にも、心の交流が芽生え始めるのである。

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もちろん最後には誰もが望む結末がやって来る。だがそれまでの道のりは、香港映画らしく直球路線から一ミリもブレることなく、ネタをこれでもかとてんこ盛りにした展開を見せてくれる。印象としては、ゆうにハリウッド映画の定石で換算すると三本分以上の要素があるのではないかと感じるほどだ。細かくぶち込まれる小ネタだけで、何杯でもご飯がいける。

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せっかくのネタの山なので、無駄にならないよう詳解はしないが、とにかく荒唐無稽かと思えばいきなりリアルになったり、ロマンティック・コメディになったかと思えば腐女子向けサービスのようなシーンもあってむずがゆくさせる。しかも『ロッキー』かと思って安心していると、仰天させられるので油断も隙もない。

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さらにいってしまうと、『ロッキー』展開をいったん覆したあともう一度同じことをすると見せかけて、登場人物の造形とまったく矛盾していない上ちょっとしたギャグにもなっているという、きわめて気の利いたアイディアひとつですべてが解決される。

そういうわけで、ひたすら楽しい映画なのだ。

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公開情報

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2015年1月24日(土)より、新宿武蔵野館 他全国ロードショー