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キッチリくだらない

ニコラ・ブナム+フィリップ・ラショー『世界の果てまでヒャッハー!』

文=

updated 11.19.2016

一般に「フランス産コメディー」といえば、人間ドラマや風刺に重心を置いていたり、完全なスラップスティックでも泥臭さの抜けきらない印象だったような気がするが、本作を見るかぎりどうやらいつのまにか『ハングオーバー!』(09)的なものと同じ地平に立っていたということらしい。

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構造自体は、『ハングオーバー!』をひっくりかえしたようなものになっている。どういうことかというと、要するに気の弱い不器用と完全なるマヌケを含む能天気仲間がブラジルでのヴァカンスにやってきて大騒ぎというお話なわけだが、単にハメをはずしすぎて記憶がスッ飛び、それを謎として物語が進むといことではない。

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そのあたりがなかなか巧みで、ジャングルに出かけた主人公たちが行方不明になり、どういうわけか小型のヴィデオ・カメラだけが見つかる。で、そのカメラを再生してみると、少しずつ連中になにが起こったのかがわかってくるという仕組みなのだ。つまり、劇中にファウンド・フッテージ・スタイルのパートが組み込まれているのである。

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もちろん起こったことというのが、期待通り徹底的にくだらない。くだらないのだが「こういうアホなヨーロッパ人たちいそう」という線は守られている。その上、ギリギリのところで嫌悪感を抱かせるところまではいかないというバランス感覚もあったりする。

ただし、アマゾンのジャングル、エコ意識高い系ホテル、原住民の部族、絶滅危惧種などなど、いくらでも風刺性を深めたり尖らせたりできる要素がつめこまれているのだが、いたずらにそこを掘り下げることはしない。これがアメリカ産コメディだったらもっとどぎつくいくんじゃないかというところでキッチリくだらない方に舵を切る。

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つきあっている彼女に婚約を申し込もうとしている不器用青年フランク(共同監督・脚本でもあるフィリップ・ラショー)がどうなるかだとか、ジャングルからどうやって生還するのかといったお話は基本的にどうでもよく、どこまでテンポよくアホを繰り出せるかということに特化するのである。

どれだけ物事が裏目にでるのかということ以上でも以下でもない。英語タイトルにもあるとおり、「All gone south.」が内容のすべてなのだ。そこが好感を持たせる。

ところで、本作はシリーズもの(原題『Babysitting』(14)の続編)らしいが、もちろんこれだけを見てもまったく問題はない。このキャラたちならいくらでも作れるということに過ぎないのだろう。

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公開情報

© AXEL FILMS – MADAME FILMS – M6 FILMS – CINEFRANCE 1888
11/19(土)より、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国公開中
配給:アルバトロス・フィルム
HP: www.hyahha-movie.net