黒澤明『七人の侍』(54)と、そのリメイクであるジョン・スタージェス『荒野の七人』(60)。これら二作のことは忘れるというのが、この映画の最も正しい楽しみ方だろう。そもそも、「農民が悪人たちによって苦境に置かれている。そこで、7人の侍/ガンマンを雇って立ち向かう」というひとことあらすじ以外はほぼ一新された物語なので、思い出す必要もない。
夫を殺害された若き未亡人エマ(ヘイリー・ベネット)が、7人を雇い入れる。悪人ボーグ(ピーター・サースガード)の残虐に縮み上がり思考停止に陥った村人たちを鼓舞し立ち上がるのが女性である点にも見られるように、この物語もまた、伝統的には白人男たちが撃ち合うというジャンルだったウェスタンを、わかりやすく現代社会の基準にシンクロさせるところからはじまる。
だからリーダーは、黒人のサム・チザム(デンゼル・ワシントン)である。最初に仲間となるギャンブラーのファラデー(クリス・プラット)は白人だが、その次に接触するバスケス(マヌエル・ガルシア・ルルフォ)はメキシコ人のお尋ね者だし、三番目に参加を打診されるグッドナイト(イーサン・ホーク)は、アジア人の相棒ビリー(イ・ビョンホン)と一心同体である。そこにかつてインディアン殺しで名を馳せたホーン(ヴィンセント・ドノフリオ)と、部族を追われたネイティヴ・アメリカンのレッド・ハーヴェスト(マーティン・センズメイヤー)が加わり、7人となる。
そうした人種的あるいは歴史的文脈の多彩さの上で、7人のリクルート場面はそれぞれ楽しくキャラ立ちをさせる。仲間になってからもファラデーとバスケスはなにかというといがみ合い、ビリーに見守られているグッドナイトはなにやら問題を抱えているようだといった具合に、おいしいところはきちんとおいしく語られていくのである。
もしかすると悪者だけがちょっとウスいかも、という印象が残らないわけでもない。だがこれだけ濃いメンツが7人もいれば、それと比較してたった1人の存在感が薄まるのは仕方がないことかも知れない。そういえば、『七人の侍』でも『荒野の七人』でも、悪人に関する記憶はまったくない。
こうして、映画は手堅く展開されてゆく。ようするに、安心して見ていられる。「安心できるけど興奮はしないの?」と問われれば、正義の軸をブレさせないのであれば脚本はこういうことでいいのだろうし、その上で完成版以上に特別な手ざわりにするには、大胆な省略やらなんやらようするに語りをスタイリッシュにしていくほかないのだろう。だがそうすると敷居は高くなる。
なんとはなし、ちょっと物足りなく感じる向きはあるのかもしれないが、これで十分だと思う。デカイ画面でダイナマイトとかガトリング・ガンが炸裂し、男たちがカッコよく散っていけばそれでいいではないか。という気分にはなれる。
公開情報
2017年1月27日(金)ロードショー
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント