自動車メーカーを経営する実業家と、与党を率いる大統領候補がいて、その二人を結び付けたジャーナリストがいる。そしてチンピラのアン・サング(イ・ビョンホン)は、ジャーナリストの“弟分”として汚れ仕事を引きうけている。
もう一方には、対立候補に肩入れする上司の指示に従い、自動車メーカーから流れているにちがいない裏金の証拠をつかもうとする、若いソウル地検検事ウ・ジャンフン(チョ・スンウ)がいる。ウ・ジャンフンは“コネ”も“学歴”も持たず、出世のためには実力だけでおのれの価値を証明してゆくほかないという立場にある。
韓国社会の隅々にまで張り巡らされた黒い権力ネットワークを敵に回し、優秀だが何の後ろ盾も持たない検事と、知恵と腕っ節だけが頼りのチンピラが共闘するというのがこの映画の物語である。犯罪者と法の番人という、相いれない敵同士だったはずの男たちが、孤独な二匹の野良犬として手を組むというわけだ。
大統領候補の不正を暴くという、国全体を巻き込むスキャンダルの発表から幕を開けるこの映画は、当初はリアルな社会派ドラマのように見える。ところがイ・ビョンホンがいきなりエライ目に遭い、激しい復讐の念をたぎらせるというくだりを過ぎたあたりから徐々に、実のところむしろ、はるか『スティング』(73)にまで連なる“コン・ゲームもの”に、濃度の高い劇画的な男の意地やら義理人情をまぶした、王道の大衆娯楽映画であることが明らかになってゆく。
“コン・ゲームもの”である以上、だましだまされが幾重にも続き、登場人物がだまされていると思っていたら観客であるわれわれの方がだまされていたということにはなるのだが、もちろん全体としてスッキリ洗練された味わいというわけではない。知恵くらべのゆくえが気になる以上に、下品でえげつない悪者たちに笑ってしまうし、チンピラ世界の友情の爽やかさに気恥ずかしくなったりする。なんのてらいもなくそういうかんじに突き進むあたりの、濃ゆい味付けが魅力のひとつなのだろう。
公開情報
© 2015 SHOWBOX AND INSIDE MEN, LLC. ALL RIGHTS RESERVED
3月11日(金)TOHOシネマズ新宿他、全国ロードショー
配給: クロックワークス