REVIEWS
ロックをビジネス以外のなにものではないものと見なす強欲なプロデューサー(ポール・ジアマッティ)、かつてロックに狂い今は反ロック運動に狂う中年女(キャサリン・ゼタ=ジョーンズ)、プロフェッショナルの境界を越えてロック・スターに接近する女記者(マリン・アッカーマン)、ストリップ小屋の経営に身をやつしながら優しくヒロインを見守るかつては同じ夢を追ったであろう女(メアリー・J・ブライジ)、資金難にあえぎながらも伝説のライヴハウスの火を消さない男(アレック・ボールドウィン)、そして彼の右腕であることを越えた愛に気づく英国訛りの男(ディエゴ・ボネータ)。
このミュージカル映画について語るべきことはほとんどない。
時は80年代。舞台はハリウッド。彼の地では、映画スターだけでなく、数々のロック・スターたちが栄枯盛衰を繰り返している。そうした輝ける世界を目指す男女の若者がいて、スターたちの登竜門として名を馳せるライヴハウスでバイトをしながら夢を目指している。やがて訪れる成功への契機。名声と凋落、裏切りと愛憎と堕落の果ての復活。すべては耳慣れたなじみの“ロック・ナンバー”と共に語られる。それ以上でもそれ以下でもない。
トム・クルーズによって演じられる、“伝説のロック・スター”のウソっぽさに辟易するむきもあるだろうが、スターのウソっぽさをペラペラのウソっぽさとして演じているのだから、トム・クルーズはりっぱに仕事をしていると言えるだろう。
ブロードウェイで鍛え上げられた脚本だけあって、すべての登場人物がしかるべきところに配置され、しかるべき役柄を担っている。度肝を抜かれることはなくても、まったくもって安心して眺めていられる上質な娯楽映画なのである。それだけ言っておけば充分だろう!
☆ ☆ ☆
『ロック・オブ・エイジズ』
全国ロードショー公開中!
配給:ワーナー・ブラザース映画
(c)2012 WARNER BROS. ENTERTAINENT INC.
www.rockofages-movie.jp
スタジオ・ボイス特別号「MUSIC in CAR」>>
連載コラム/
梅澤春人『カウンタック』〜『サーキットの狼』から40年、スーパーカーの轟音ふたたび。
初出
2012.09.26 17:30 | FILMS