欲望に誠実ということで言えば、もちろん「太平洋の裂け目」から次々と出現する「KAIJU」たちという設定は、ラヴクラフト的=クトゥルー的な宇宙観そのものでもあるが、その深淵を覗き込むことになる科学者二人組など、そこから派生する細々とした導線も楽しい。デル・トロ作品常連のロン・パールマンも、そのあたりで活躍することになる。
さらに付け加えておくならば、今作はデル・トロ作品の中でももっとも滑らかな語りを獲得しているというか、ほとんど語りを感じさせない「普通さ」に到達している。
思えば、『クロノス』(93)から『デビルズ・バックボーン』(01)までは、どんな題材を扱っても、そこにはデル・トロ印と呼べる奇妙なぎこちなさが埋めこまれていた。それは不器用ということでもあっただろうし、敢えてスタイルとして滑らかではない語りを選択しているということでもあっただろう。それが成功している時には強い魅力でもあった。しかし、『ブレイド2』(02)以降、デル・トロはそこからの脱皮に邁進してきた。その過程で見事なバランスに到達したのが、『パンズ・ラビリンス』(06)だったとも言える。
当然、この映画における「物語」とは、前述のようなディテイルの蓄積そのものをも含むわけで、そうしたものが登場人物たちを圧倒しかける瞬間はあるものの、全体として観客は、彼らの心情に誘導されて物語の中に入り込むことができるという仕上がりになっている。
個人的にはもっと個々のロボットをハッキリとキャラ立ちさせてもらいたかったなどなどの気分が残ってはいるが、そういうわけで、そうしたことを差し引いても、十二分に楽しい映画なのである。
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□『パシフィック・リム』 8月9日(金)新宿ピカデリー 丸の内ピカデリー他 3D/2D同時公開 配給:ワーナー・ブラザース映画 (c)2013 WARNER BROS.ENTERTAINMENT INC.AND LEGENDARY PICTURES FUNDING,LCC オフィシャルサイト http://wwws.warnerbros.co.jp/pacificrim/ |
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初出
2013.08.07 08:00 | FILMS