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トッド・フィリップス監督

『デュー・デート~出産まであと5日!
史上最悪のアメリカ横断~』

落差と頻度の徹底ぶり

文=

updated 01.28.2011

『ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い』も素晴らしかったが、本作との共通点は、監督とひとりのデブ=ザック・ガリフィアナキス。無神経なだけでなく他人の神経に障る非常に高い能力を持っているが、本人に悪意はない。というより、溢れんばかりの善意が故に、他人の神経に障りまくるという汚いデブのおっさん。今作ではそれがさらに一歩進められ、前半に我々が抱かされる嫌悪感は並ではない。そのあたりが、同じデブでもギリギリで愛され(得る)キャラに留まるジャック・ブラックとは違うところなのである。そして、そのガリフィアナキスに翻弄されまくることになる不幸な男が、ロバート・ダウニーJr.。すぐにでもキレそうな顔で、決して性格が良さそうではなく、どこまでも自信たっぷりでイヤミな人間として、相手役には最適なキャスティングである。

このふたりが一台の車に乗ってアメリカ縦断旅行をするハメになるというパターンとくれば、最終的にふたりが理解し合い親友になるのは必然なわけだが、上述のとおり、どう考えても理解したいとは思わせないガリフィアナキスの存在によって、気が遠くなるくらい高い敷居を設定するところから、この映画は始まる。が、わりと早めに、ロバート・ダウニーJr.の側もほとんど憐れを誘われる形によってガリフィアナキスを受け入れそうになる。観客もその気持ちには共感する。ところが、その度にガリフィアナキスの側の度を超したエゲツなさによってたちまちすべてがご破算になる。ということを幾度も繰り返しながらこの作品は進行してゆくことになるのだ。その落差と頻度の徹底ぶりによって、抜きんでているということになろうか。ただし、最後にはきちんと純粋なエモーションを起動させてわかりやすく幕を閉じるので安心して欲しい。こうした作品によって、日本におけるアメリカ産コメディの市場が拡大されることを祈るばかり。

『デュー・デート ~出産まであと5日! 史上最悪のアメリカ横断~』
シネセゾン渋谷、新宿武蔵野館ほか全国ロードショー公開中!


『デュー・デート』オフィシャルサイト
http://wwws.warnerbros.co.jp/duedate/index.html

公開情報

©2010 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.



初出

2011.01.28 08:00 | FILMS