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クリスチャン・アルバート監督
『PANDORUM』

文=

updated 10.13.2010

安心して楽しめます 文=川本ケン 2174年、滅亡寸前の地球から一隻の宇宙船が飛び立つ。積載物は6万人と生物サンプル2000万種。だが、超長期冷凍睡眠から主人公たちが目覚めると、船内にはひとけがなく、不気味な痕跡だけがそこかしこに残っていることに気づく。 閉鎖環境で孤独に耐えなければならない宇宙飛行士たちの罹る病(要するにキャビン・フィーバー)=パンドラムが、なにか凄惨な事態を招いてしまったのだろうか? そもそも宇宙船は今どこを航行しているのか? という極めてオーソドックスであるが故に、ただちにSFホラー心をくすぐる状況設定から、この映画は始まる。 この出発点から辿るべき道は、もちろん分かっている。そこからどのように逸れてみせるのか。あるいは、その道そのものをどれだけ楽しく演出してみせるのか。 プロデューサーにはポール・W・S・アンダーソンの名前がクレジットされている。 なるほど、すでに十年以上前になる自身の監督作『イベント・ホライゾン』に通底する雰囲気/設定である。だがしかし。 この『イベント・ホライゾン』は出だしから結構楽しめて、中盤以降までだいぶ頑張ったのに、ツメがあと一歩という惜しい作品ではなかっただろうか。かの作品のみならず、監督作ではいつも同じ痛痒を感じさせる男だった。では今作はどうなのか。 果たして、最後まで辛うじて逃げ切っているではないか。 プロデューサーになれば冷静なオタク心を機能させられるということか。欲を言えば、オチものにしてしまわず、最後でSF的な大転回を見せてくれれば文句はないのに、などと口出ししたくなるところは多々あるのだが、一言で云えば楽しめた。 どこの国のお金でもいいし、このくらいのレベルで全く構わないので、当たり前の設定&展開によってキッチリとジャンルに奉仕している、つまりは安心して見られる娯楽映画をもっと生産してもらいたいものである。 『PANDORUM』 配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント 新宿武蔵野館他 全国順次公開中 【予告編/海外】 www.youtube.com/watch?v=PItZ-qr9jG8&feature=channel

初出

2010.10.13 08:00 | FILMS