New Year's Eve

ゲイリー・マーシャル監督
『ニューイヤーズ・イブ』

ブレのないお約束映画

文=

updated 12.15.2011

ニューヨーク、大晦日(ニューイヤーズ・イブ)、ボール・ドロップ(カウントダウンと共に下ろされるクリスタルのボール)。考えつく限りのオールスター・キャストを登場させ、それぞれが主役になるように。しかも見終わった後にはちょっとした幸福感がなければならない。という、企画書の「主旨」欄が目に見えるようだが、まさにその通りの映画である。

思えば、クリスマスというのは「ちょっとした奇跡」のおこる時節として数え切れないほどの映画に時空を提供してきたわけだが、こちらが日々の喧噪が少し遠のいた中でしっとりと過ごされる夜であるのに対して、大晦日の方は真夜中前後の大騒ぎのピークへと向かって駆け上がる夜であって、アクション映画や犯罪映画での背景に使われることはあっても、本作のようなロマンティック・コメディ系に用いられることは意外と少なかったような気もする。

この映画ではもちろん、そうした派手なお祭り感を最大限に利用し、賑やかさの背後ないしその狭間で生まれる、時間がふと息を止めたような小さな物語の瞬間を、かけがえのないものとして積み上げてみせる。しかも、そうした小さな物語の主人公たちが、だれもが目にしたことのあるいわゆるスターたちであるがために、地味であるはずの出来事にきらびやかさが加わる。要するに、極めてそつなく仕上げられた作品であることに間違いはないし、どんな観客でも安心して眺めていられる。

ただ構成上は、今年の五本指に入るうれしい驚きをもたらしたグレン・フィカーラ&ジョン・レクア『ラブ・アゲイン』を思い出させる、「ちょっとした工夫」がいくつかちりばめられており、そういう意味でも、お約束映画としての健啖ぶりにはブレがないのである。

『ニューイヤーズ・イブ』
12月23日(金)丸の内ピカデリー他 全国ロードショー
配給:ワーナー・ブラザース映画

□ オフィシャルサイト
http://www.newyearseve.jp

公開情報

(C) 2011 NEW LINE PRODUCTIONS, INC.



初出

2011.12.15 16:00 | FILMS