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シルベスター・スタローン
『エクスペンダブルズ』

文=

updated 10.19.2010

拳ひとつの昔気質! 文=川本ケン 『特攻野郎Aチーム THE MOVIE』が、オリジナルの精神を現時点でのリアリズム基準に拠りながらテクノロジーを駆使しつつアップデイトしたものであるという意味で、完全に時代とシンクロした作品であるならば、『エクスペンダブルズ』とは、アクション映画とは文字通り肉体のアクションによって組み上げられるもの以上でも以下でもないという基本に立ち返って作り上げられた、極めて反時代的な作品である。愚鈍なまでの昔気質と呼んでも良い。 なにより、老い=時代とのズレを感じ始めている傭兵たちが主人公であるにもかかわらず、そこに自己憐憫はない。つまり、老アクション・スターたちによるセルフ・パロディや自虐ネタ満載の笑える作品になろうという志の低さは微塵も見あたらない。かといって、無敵の現役スターを気取るわけではない。スタローンの役柄ですら、肉体の力において凌駕され得る者として描かれているのである。 それゆえ、若きヒロインの存在はあれど、色恋が物語をドライヴすることはない。主人公たちは、ひたすら意地と仁義のために、悪人どもと戦う。そしてまた悪人どもは、とことん悪逆非道を尽くす。そこには、政治も経済も存在しない。 要するに、この映画の男たちは、ただひたすら拳で殴り合い、車をぶち当て合い、重火器をぶっ放し、ナイフで切り裂き、建造物を吹き飛ばし続ける。 その姿はすでに、職人的なプロの在り方すらをも遙かに超え、今さらこんなことでいいのだろうかと微かに懸念させながらも、あるひとつの、無視することのできない過剰な塊をこれでもかと投げつけてくるのである。もはやそれは、誠実さと呼ぶしかないのではないだろうか。 嘲笑の対象であった時代を経て、スタローンはそういう作家になってしまったのだ。あるいは、そういう時代を、我々は招いてしまったということなのかもしれないが。 『エクスペンダブルズ』 全国超拡大ロードショー中! 【関連サイト】 オフィシャルサイト http://www.expendables.jp/

公開情報

©2010 ALTA VISTA PRODUCTIONS, INC



初出

2010.10.19 11:00 | FILMS