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SVが選ぶ「クリスマス映画三昧!」Vol.1

ティム・バートン監督
『フランケンウィニー』

暴力的な誠実さ

文=

updated 12.12.2012

ティム・バートンによるモノクロのコマ撮りアニメーションである以上楽しくないわけがないのだが、この映画の魅力はなによりも「死んだ飼い犬を生き返らせたい!」という強い願いをそのまま物語に展開してしまったという直球の強度にあるだろう。実際、それだけがこの映画のあらすじだと言ってしまっても良いくらいなのだから。

ただし、当たり前の話だがそこにはもうひとつ直球の要素が埋めこまれている。それが「愛」だ。少年ヴィクターは、飼い犬への強く歪みのない愛情によってスパーキーを蘇らせるが、その方法を剽窃して自分たちのペットを蘇らせようとした同級生たちは、小さな町に大災害をもたらすことになる。蘇生方法のミスに拠るのかとも思わせるのだが、どう見てもそこにあるのは「愛」の強度の差に過ぎないのだ。

 

そして、この映画を素晴らしいものにしているものがもうひとつある。それは、「愛」などというものによってドライヴされた映画は、特にそれが幼い観客にも向けて作られている場合はたいてい社会的に落ち着きの良い教訓で締め括られることになるわけだが、この作品においてはそうではないということ。

 

つまり、「生命をもてあそんではいけません」「死んでしまったものは静かに眠らせてあげましょう」といった結論にはいたらず、その真逆が示される。「愛していた犬が生き返ってきてよかったね!」というところでこの映画は終わるのである。もちろん、スパーキーとていつかは死ぬだろう。身体が腐敗するのが先か、ヴィクターが成長と共に愛情を失うのが先か、それはわからないが、永遠に続くものはないということを我々は知っている。だからこそ、この子どもじみた、暴力的な結論に喜ぶのだ。そしてこの結論の持つ誠実さの暴力性によって、映画における「愛」は必然性と強度を獲得する。だから、そんなことは何も考えずゆっくりとこの映画を楽しめばよい。

☆ ☆ ☆

 

12月15日(土)3D/2D同時公開
©2012 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.

オフィシャルサイト http://www.disney.co.jp/movies/frankenweenie/

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初出

2012.12.12 10:00 | FILMS