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SVが選ぶ「クリスマス映画三昧!」Vol.2

ピーター・ジャクソン監督
『ホビット 思いがけない冒険』

一瞬の娯楽力

文=

updated 12.13.2012

『ロード・オブ・ザ・リング』の前日譚にあたるのが、というよりも原作者J.R.R.トールキンがまず書いたのは『ホビットの冒険』で、この映画はそれを基にした三部作の第一部にあたる。周知の通り、『ロード・オブ・ザ・リング』の原作『指輪物語』は、評論社の日本語版文庫で全9巻に及ぶ長大な物語だったわけだが、こちらは岩波少年文庫版でも2巻に収まっている。つまり、あらすじを文章でまとめればほんの数行に収まりそうなネタを、映画的アクションとヴィジュアルの力によって2時間50分の尺に仕上げている。そしてそれは、(いつもながら)ピーター・ジャクソンの豪腕によって、見た感覚としては“一瞬”であると記しておくことで、ほとんど作品紹介の用が足りてしまうレベルに達している。

 

正直なところ、1秒につき48フレームというHFR 3D版がどれほどの効果を持ち得ているのかは判然としなかった(コマ数が多いという先入観による錯覚かもしれないが、若干ビデオ撮影的な生っぽさを感じた)。だが、そうした付随的な事柄は総合的な娯楽力の強さによってどちらでも良いものとなっていたことも付け加えておこう。

 

『ロード・オブ・ザ・リング』に惑溺した観客はなにひとつ心配する必要がない。ガンダルフが登場し、若き日のビルボ・バギンスが駆け回り、ゴラムが地の底で呻き声をあげる。大軍勢同士の戦闘においてもハッキリと一人一人の生き死にが見られ、危機一髪に次ぐ危機一髪がいくら続いても、無償のアクションと化すことなくきっちりとエモーションを誘導してくれる。万が一この作品によって中つ国の物語世界にはじめて足を踏み入れる観客がいたとしたら、その観客はさらに幸運ということが出来るだろう。いかにして指輪がビルボ・バギンスの手に落ち、彼がどういう冒険に身を投じたのかを体験してから、あの壮大な物語へと歩を進めることができるのだから。

そういうわけで、端的にいって、この映画を見ない法はない。

☆ ☆ ☆

 

12月14日(金)丸の内ピカデリー他全国公開!
3D&2D同時公開 HFR 3Dも公開(※一部劇場にて)
ワーナー・ブラザース映画配給
(C) 2012 Warner Bros. Ent. TM Saul Zaentz Co.

オフィシャルサイト www.hobbitmovie.jp
facebookオフィシャルページ www.facebook.com/hobbitjp


第2部『ホビット スマウグの荒らし場』2013年12月13日(金)全国公開!
第3部『ホビット ゆきて帰りし物語』2014年7月18日(金)全国公開!

スタジオ・ボイス特別号「MUSIC in CAR」>>新連載「OUR “MUSIC in CAR”」。第1回は、横浜で開催されたポルシェオーナーの祭典「エキサイティング・ポルシェミーティング」のリポートをお届けします!

初出

2012.12.12 15:00 | FILMS