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ポール・フェイグ監督
『ブライズメイド 史上最悪のウェディングプラン』

女性の幸せのありかた

文=

updated 04.26.2012

さえない30代を共に送っていたはずの親友が突如結婚することになり、「花嫁介添人=ブライズメイド」たちが、というよりも介添人たちのとりまとめ役を仰せつかった主人公(=クリステン・ウィグ)ひとりが、幸せからの取り残され感から、ジタバタと迷惑な大騒ぎを繰り広げるというお話。

ヒロインは、せっかく開店したケーキ屋を潰し、パートナーであった男にも逃げられ、何の興味も持てない宝石店での労働に従事しながら、催した時にだけ携帯を鳴らしてくるセックス・フレンドの家に赴き、朝までに追い出されるという生活を送っている。その敗残感から、「花嫁の親友」の座を巡る権力争いでは意地を張ってしまうなど、あらゆることが裏目に出る。

脚本には主演のウィグ自身が参加しており、さすがに『サタデー・ナイト・ライヴ』出身のコメディエンヌらしく、ギャグが下品で汚いのみならず、ヒロインのダメ描写は容赦なく、クライマックスではほとんど見ていられないくらい痛々しいという域にまで達する。それはそれで抜群に面白いし、なるほどこれがリアルな実感であり、そこに共感する女性観客が多数存在することも理解できる。であるにしても、ただ単に友達が結婚するというだけで、なぜここまで感情的にとっちらかってしまうのだろうという素朴な疑問は浮かぶ。

そう考えると、男の介添人たちを主人公にした『ハングオーバー』シリーズののんきぶりが際立つというものだろう。指摘するまでもなく男の場合、「結婚=幸せではない」というよりも、結婚直前の時点では、結婚と幸せとは無関係のものであって、むしろ単純に「結婚=契約による束縛」であり、契約期間突入前になにがなんでも「最後のハメはずし」をしたいというただひとつの欲望に駆られるに過ぎない。

一方で、本作が「リアル」なものであるならば、セックス・フレンドと気ままに楽しんでいる「自由な女」であってもやはり、「ちゃんとした恋人」がいないかぎり「不幸」なのであり、その不幸は同時に、「本当にやりたいこと(このヒロインの場合はケーキ作り)」から目を逸らして生きていることと重なり合ってもいるが故に、敗残仲間と思っていた親友が突如結婚によって離脱してしまうということが即座に人生そのものを見直す契機となってしまうのだ。それはやはり、我々の生きる社会の仕組みがそういう風になっているからなのだろうと考え始めざるを得ない。

生活に根ざしたリアル感、ギャグの過激さ、バディものとしての収まり具合などなどとにかく映画としては極めてウェルメイドであるし楽しめるのだが、女性の幸せのありかたがラディカル追求されることはない。もちろん、だからこそウェルメイドな娯楽映画として機能するということはよくわかっているのだが、こういう作品を作れる人たちには、ぜひとも思わず唸らされるような、胸のすくような女性像を、いつの日か提示してもらいたいなあとも感じた次第。

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『ブライズメイド 史上最悪のウェディングプラン』
4月28日(土)より、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか、全国ロードショー!
(C)2011 Universal Studios. ALL RIGHTS RESERVED

□ オフィシャルサイト
http://www.bridesmaidsmovie.jp/

初出

2012.04.26 09:30 | FILMS