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『大人が作る秘密基地』番外編

その1 コミュニティスペースと角打ち

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updated 04.17.2014

全国にある大人版・秘密基地を18カ所取材してまとめた書籍『大人が作る秘密基地』(DU BOOKS)を、先日上梓した。この本のなかでは、18の秘密基地を便宜上7つの類型に分けて論じているが、大人が作る秘密基地には、無数のバリエーションがあることが取材を通して分かってきた。

そもそも、大人が作る秘密基地は、空き地や雑木林などに作られる子供の秘密基地と違って、なんらかの目的がある。ここでは、本書で取り上げることのできなかった秘密基地をいくつか紹介しながら、なぜ大人になってもこうした場が必要とされるのかを考えてみたい。

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朝日ほのぼのランド

豊島区にある「朝日ほのぼのランド」は、都電荒川線の新庚申塚駅から徒歩3分の住宅街のスキマにひっそりと佇んでいる「みんなの広場」である。ここは、区がまちづくり用地として取得した民家跡地(狭い!)を、地域住民の手で改装しオープンしたいわば「共同農地」のような場所だ。詳しくは豊島区のホームページ(http://www.city.toshima.lg.jp/koho/hodo/23185/023072.html)を参照して頂きたい。

こうした利用方法は、建て壊しの費用や立地条件などが足かせとなって、都市部でも借り手の見つからない空き屋の問題を解決する、一つの有効な事例と言っていいだろう。ちいさなスペースではあるけれど、収穫などのイベントを通して地域コミュニティの交流の場にもなる。基本的には他の地域の人々に開かれているわけではないようだが、それがまたこの場所の秘密基地感を強めている。

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hide_out_01_ph05十一屋酒店(上)、あみたつ(下)

大人が作る秘密基地の目的とは、一つに「コミュニティ形成に役立つこと」であることが分かる。いわゆる酒屋の空きスペースを利用した「角打ち」も、大人の秘密基地の一種だと言えるだろう。例えば、千石駅から徒歩で10分ほど歩いた場所にある「十一屋酒店」、鮮魚店が夜に開店させる京都・三条商店街の「あみたつ」などがそうだ。こうした「従来の商業スペースを、別の利用目的に転用する」方法は今後各地で増加していくだろう。

一方、お店や交流スペースとして利用されていない個人的な秘密基地は無数に存在するが、一般に解放されていないため、探すのが難しい。しかし大人が作る秘密基地の真骨頂は、個人的な場所にこそある。秘密基地のもう一つ重要な目的は「自分の生き方をカスタマイズする場所」だからだ。次回は、より発見の難易度の高い「個人の秘密基地」を紹介することにしよう。

参考:『大人が作る秘密基地』http://www.amazon.co.jp/dp/4907583125