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大人の作る秘密基地

その2 秋田市、島根県吉田村ほか

文・写真=

updated 06.06.2014

島根県吉田村にある空き屋

全国にある大人版・秘密基地を18カ所取材してまとめた書籍『大人が作る秘密基地』(DU BOOKS)を、先日上梓した。この本のなかでは、18の秘密基地を便宜上7つの類型に分けて論じているが、大人が作る秘密基地には、無数のバリエーションがあることが取材を通して分かってきた。
第二回目は、個人が作る秘密基地をテーマにしようと思っていたのだが、現状は絶賛探索中なのでしばらくお待ち頂きたい。今回は、ちょうど出張の合間に見つけた秘密基地的なる場所をいくつか紹介してみよう。島根県吉田村は、筆者の父の実家にあたる場所で、周りは山と畑に囲まれまさに限界集落といった風情だ。この吉田村には空き屋がいくつか存在するが、まさにこの民家は筆者がかつて(1〜2歳の頃)住んでいたという家。二階建て、離れと蔵を備えた立派な家だ……しかし現在は誰も住んでいない。

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部屋の中の様子

どの地域も人口減少という課題は深刻であり、古民家活用に各自治体が取り組んでいても状況は加速するばかりだ。私は数年かけてこの古民家をなんとかしたいと思っている。一つには、アーティスト・イン・レジデンスという方法がある。現代美術作家を一定期間逗留させて、作品制作と家屋の修復、地域住民との交流という3つ以上のメリット備えたプロジェクトを推進するのだ。しかし、これには自治体などの支援が必要なので時間はかかるだろう。
もう一つの方法は、周辺地域の仲間をある指定された日時に呼び集めて、滞在しながら家屋の修復を行なうというもの。これならば資金面でそれほどの負担は掛からない。さらに、盛り上がってきたら、裏山の敷地を利用してツリーハウス・ヴィレッジを作ることも可能だろう。首都圏および、関西圏在住の人々をターゲットとするのではなく、北九州や瀬戸内までの範囲に限定して、ある種の広域コミュニティを形成するための拠点にするのもいいかもしれない。ある意味、都市圏と都市圏の狭間に位置する、このような山間地域はエアポケットであるがゆえに、ハブになりうるポテンシャルも秘めているからだ。

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秋田市にあるオルタナティブスペース「ココラボラトリー」

先日、秋田市にあるオルタナティブスペース「ココラボラトリー」を訪れた。こちらもまた人口減少や高齢化といった課題をかかえる秋田県。その中心部、秋田市でほぼ唯一といっていいアートスペースがここだ。なんとビル一棟をまるまる改装して利用しているそうだ。一階に貸しギャラリーを設置し、二階、三階にはカフェや雑貨店などがひしめきあっていて、アートやカルチャーに関心のある若者がこぞって訪れる場所になっている。県外からのアート関係者とのネットワークを生み出しつつ、こうしたスペースに飢えている地元の若者の避難所としても機能しているのだろう。この秋田市、かつてはそれは栄えていたようで、駅前には空き室の目立つデパートや、廃墟となったホテルが立ち並んでいる。まるで九龍城のなかをめぐるように、こうした廃墟に迷い込むようなことをいずれやってみたいと密かに思っている。

参考1:「ココラボラトリー」 http://www.cocolab.net/

参考2:『大人が作る秘密基地』 http://www.amazon.co.jp/dp/4907583125