REVIEWS
Vol.7 80年代アメリカの相貌 文=川本ケン 『バック・トゥ・ザ・フューチャー』が公開されたのは1985年。80年代のど真ん中であり、当時のアメリカは、81年に就任し、2期=8年間続いたレーガン政権のど真ん中でもある。 70年代に低迷したアメリカ経済への回復策として取られた「レーガノミックス」と呼ばれる経済政策も効果を上げず、大きくなる一方の対日貿易赤字に対する憤懣が、いわゆる「ジャパン・バッシング」につながっていった時期でもあり、外交の分野では「強いアメリカ」を打ち出し、それまで進行中であった冷戦雪解け=「デタント」を解消、ソ連に対する対立姿勢を鮮明にした時期でもあった。 そういう時代が、アメリカに生きる高校生の精神に及ぼした影を確認するには、89年というレーガン政権最末期の大統領選時期を舞台にした『ドニー・ダーコ』(2001)が詳しい。だがもちろん、そうした80年代の暗黒面が、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズで描かれることはないし、このシリーズではそういった視点を導入する必要もないわけだが、ぼんやりとそんなことを頭の隅に置きながら、主人公マーティの体現する80年代カルチャーを考えるのも、興味深いかもしれない。 「25thアニバーサリーBlu-rayBOX」の詳細はこちら
初出
2010.11.10 08:00 | FILMS