SUPER8/????????

J.J.エイブラムス監督
『SUPER 8/スーパーエイト』

ひと夏の輝き

文=

updated 07.04.2011

ひと夏の冒険ジュヴナイルものには、何歳になっても惹きつけられる輝きがある。子供の時分でさえ、その輝きを感じたものなのだから、長じてしまったからといって、失われたものへの憧憬が故にとは言い切れないだろう。

とはいえその輝きは、よほどのクオリティに到達した映画でないとなかなか放つことはできず、そういう意味で本作は、ギリギリその強度を獲得し得ている、とまず書き付けておこう。

まず、主人公が非モテでもないけどイケてもいない優しい少年というのは伝統をおさえた正しい選択であるとして、その親友でありかつ主人公を含むグループのリーダーがデブの映画オタク、しかもジャイアン的ないじめっ子顔をしているところが、ちょっと可笑しい。もちろんタイトルにあるとおり、(おそらくは田舎町であるが故に)50年代のように見えるけれど1979年を舞台にしている(テレビでスリーマイル島原発事故のニュースが流れる)この作品では、子供たちがスーパー8のカメラを使って自主制作映画を作るというのがストーリーの核となるのであるから、リーダーは必然的にオタクなわけだが。そして仲間には、歯のブリッジを剥き出しにした爆発物マニアの少年だとか、すぐにゲロを吐く俳優役の少年だとかがいて、その配置ぶりだけでも愉しくさせてくれるのである。もちろん、少年の憧れる少女もちゃんと登場し、抽象的になりすぎない神々しさを発する。

こうして見てゆくと勘所はきちんと押さえているようだし、実際、本編を見ている最中には各要素がうまく機能しているようにも見えてしまうのだが、それはわりと映像と音圧の高さに拠るところが大きく、見終わった印象からいえば、すこし物足りない。

主人公の母親が勤務中の事故で亡くなっているということと、それによって父親との間に微妙な亀裂が生じているという事実。それから、主人公一家と少女の父親との因縁。あるいは、親友である「監督」の家族と主人公との関係などなど。とにかく、種子の配置はきわめて巧みなのだが、すべてが萌芽のままに終わっているという印象が残るのだ。いや、うまいこと回収してやったという自意識だけが感じられると言った方が正確だろうか。少年たちの作っている映画の内容をはじめとして、有機的に物語の本筋に絡めてゆくべき要素はいくらでもあるのだが……。

というより、伏線の回収だとかなんとかいう技術論ではなく、ほんのちょっとしたディテイルの提示だけで、例えば宮崎駿やスティーヴン・キングだったら、物語の本質とは関係ないように見えてその実作品全体の輝きそのものを強く規定する「二度と還らないひと夏の景色」を際立たせて見せるはずであろう部分が、欠けているということなのだろう。

というわけで、策士策に溺れるということになってはいるのだが、それでも輝きは失われていないので、見て損はない。

『SUPER 8/スーパーエイト』
全国超拡大ロードショー中

□『SUPER 8/スーパーエイト』オフィシャルサイト
http://www.super8-movie.jp/

公開情報

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初出

2011.07.04 12:00 | FILMS