Peter Berg Interview
ピーター・バーグ監督 インタヴュー
『バトルシップ』
天然の豪腕
ピーター・バーグ監督作品と言えば、ウィル・スミス主演『ハンコック』(08)は、ダメな「スーパー・ヒーロー」が主人公という点では、ちょっとしたヒネリが加えられているように見えるものの、実は「不慣れなスーパーマン」が主人公であった80年代のTVドラマ『アメリカン・ヒーロー』とちょうど重なりあうという意味では、ド真ん中の直球アクション・コメディであった。そして、その前に撮られたジェイミー・フォックス主演『キングダム/見えざる敵』(07)もまた、実際に起こったテロ事件に着想を得た社会派というよりは、どこまでもストレートなアクション映画だった。共通しているのは、ジャンルとストレートに向き合う姿勢と、破壊シーン演出における重さフェチとでも呼べそうな圧力の異常な高さである。
とにかく、エイリアン来襲という大状況を引き起こしておいて、「戦艦」というタイトルをとことん裏切らない。もちろんこの映画は、そもそも昔懐かしい海戦ゲームをベースとしているので、「海戦」そのものを避けるわけにはいかなかったということはわかる。だがそれでも、ある程度の比率で艦隊戦を見せた後ならば、若干そこから離れることも許されるのではと観客が考えるその先の、最後の大決戦に至るまで、徹底して「海戦」から離脱することはないのだ。
エイリアンとの大戦闘が始まるものと思って映画を見始めると、いきなり主人公のダメ男=テイラー・キッチュがガソリンスタンドからブリトーを盗み出すというふざけたシーンから幕を開く。さては、個々人のミクロな物語次元と、地球が侵略されるというマクロな物語を同時進行させる気なのかと思っていると、映画は主人公の後を追い、あっという間にエイリアンとの海戦にまで至ることになる。
ユーモアを狙った部分よりも、クライマックスでの直球ぶりに大爆笑させられたことを伝えても、ピンと来ている様子はなかった。とするとやはり、大まじめにやっているからこその剛速球ストレートということになるのだろう。
すべてを見てきてしまったというシニシズムは、全編にわたって奇跡的なくらいに感じられない。もちろん、この映画が発見あるいは発明したものは、エイリアンと人間の戦艦同士が一騎打ちするという状況くらいなもので、それ以外の要素に、オリジナルなものはない。だが、語られている内容を、作り手が腹の底から信じられているというような、単なる「バカ」とか「生真面目」では済まされない、真摯さだけが持つことの出来る説得力を感じさせるのである。
アフガニスタンを舞台にした戦闘アクションであるならば、日本の基準からすると到底小さな映画になるとは思えないのだが、いずれにせよ、またしても圧の高い破壊シーン満載の映画になるのだろう。ピーター・バーグはいつのまにやら、ローランド・エメリッヒによって奪われていたアメリカ映画の一部分を天然の腕力で奪還した男ということになるのかもしれない。
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『バトルシップ』
4月13日(金)、TOHOシネマズ日劇ほか全国一斉ロードショー
配給:東宝東和
(C)2012 Universal Studios. ALL RIGHTS RESERVED.
□ オフィシャルサイト
http://battleship-movie.jp/
初出
2012.04.10 10:30 | FILMS