脱獄ものの場合、ディテイルがリアルであればあるほど興奮するだろう。『アルカトラズからの脱出』など、自分が捕まった場合にはこうすればいいのかとハウツーもののようにして見ていたものだ。そういう意味では、漂流/無人島ものに近い機能を持っている。
それでは本作『大脱出』も、タイトルからしてその路線上にあるのかと言えば、そうではない。とにもかくにも昔懐かしい、楽しさ優先リアルさ二の次というアクション映画なのだ。リアルさ二の次だからといって、説得力がないわけではない。なにしろシルヴェスター・スタローンとアーノルド・シュワルツェネッガーという、二つの肉体の圧倒的な説得力によって支えられているのだから。
もちろん、シンプルではあるが時代とのシンクロも忘れておらず、ネタはある程度ギッチリ詰め込まれている。そもそもかつてであれば、この二つの肉体が頭脳を駆使する必要はなかっただろう。極悪非道な悪人がいて、二人が大暴れすれば映画は成立していたに違いない。だが今や、そんなことでは映画はもたない、ということになってしまっている。この作品にも、“どんでん返し”ネタや、監獄もののリアルっぽく見えるディテイルが細かく仕込まれている。ただしその仕込み具合も実にシンプルで、これ見よがしさがない。これ見よがしに映し出すべきはふたりのスターの身体だけ、ということを理解しているのだ。
スタローン演じる主人公は、各地の刑務所に囚人として潜入しては脱獄するということを生業としている。各施設の持つ弱点を炙り出すために、そういう職業が成立するのだという。その脱獄のプロが、最新式監獄のセキュリティ・チェックを依頼される。イヤな予感がしつつも引き受けてしまったところ、それは罠であったことが判明する。すなわち、その監獄を出て、自らをハメた人間をとっちめるには、そこから実際に脱獄しなければならないのだ。
さて、ジム・カヴィーゼル演じる極サドな所長との困難な戦いの中で、相棒として信頼関係を結ぶことになるのが、シュワルツェネッガーである。お約束の大立ち回りの後、二人は友情を育み、最後にはド派手な大アクションを展開するという、誰が見ても安心して最後まで楽しめるようになっている。最後の最後でちょっとした伏線を回収して見せたりすることも忘れていない。
とにかく「こういうことでイイんだよ!」としか言いようのない楽しい映画なのだ。「シリーズ化したらいいのに」なんて思わせる気楽さも身にまとっているのも素晴らしい。
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初出
2014.01.10 13:00 | FILMS