ESCAPE PLAN

ミカエル・ハフストローム監督
『大脱出』

「こういうことでイイんだよ!」

文=

updated 01.10.2014

脱獄ものの場合、ディテイルがリアルであればあるほど興奮するだろう。『アルカトラズからの脱出』など、自分が捕まった場合にはこうすればいいのかとハウツーもののようにして見ていたものだ。そういう意味では、漂流/無人島ものに近い機能を持っている。

それでは本作『大脱出』も、タイトルからしてその路線上にあるのかと言えば、そうではない。とにもかくにも昔懐かしい、楽しさ優先リアルさ二の次というアクション映画なのだ。リアルさ二の次だからといって、説得力がないわけではない。なにしろシルヴェスター・スタローンとアーノルド・シュワルツェネッガーという、二つの肉体の圧倒的な説得力によって支えられているのだから。

もちろん、シンプルではあるが時代とのシンクロも忘れておらず、ネタはある程度ギッチリ詰め込まれている。そもそもかつてであれば、この二つの肉体が頭脳を駆使する必要はなかっただろう。極悪非道な悪人がいて、二人が大暴れすれば映画は成立していたに違いない。だが今や、そんなことでは映画はもたない、ということになってしまっている。この作品にも、“どんでん返し”ネタや、監獄もののリアルっぽく見えるディテイルが細かく仕込まれている。ただしその仕込み具合も実にシンプルで、これ見よがしさがない。これ見よがしに映し出すべきはふたりのスターの身体だけ、ということを理解しているのだ。

スタローン演じる主人公は、各地の刑務所に囚人として潜入しては脱獄するということを生業としている。各施設の持つ弱点を炙り出すために、そういう職業が成立するのだという。その脱獄のプロが、最新式監獄のセキュリティ・チェックを依頼される。イヤな予感がしつつも引き受けてしまったところ、それは罠であったことが判明する。すなわち、その監獄を出て、自らをハメた人間をとっちめるには、そこから実際に脱獄しなければならないのだ。

 

しかもその監獄というのが、彼自身の著作を基に設計されているため、構造的には己自身との知的な戦いということになる。だが、一向にそうは見えないデザインなのが良い。小学生の男子がデザインしたとしか思えないわかりやすさなのだ。わかりやすいといえば、「絶対逃げられない監獄の場所といったら海の上でしょう!」というアイディアもナイス。

さて、ジム・カヴィーゼル演じる極サドな所長との困難な戦いの中で、相棒として信頼関係を結ぶことになるのが、シュワルツェネッガーである。お約束の大立ち回りの後、二人は友情を育み、最後にはド派手な大アクションを展開するという、誰が見ても安心して最後まで楽しめるようになっている。最後の最後でちょっとした伏線を回収して見せたりすることも忘れていない。

とにかく「こういうことでイイんだよ!」としか言いようのない楽しい映画なのだ。「シリーズ化したらいいのに」なんて思わせる気楽さも身にまとっているのも素晴らしい。

☆ ☆ ☆

『大脱出』
公開中!
オフィシャルサイト dassyutsu.gaga.ne.jp
©2013 SUMMIT ENTERTAINMENT, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

 

関連記事:『キューティー&ボクサー』監督 インタビュー
関連記事:マルコ・トゥリオ・ジョルダーナ監督『フォンターナ広場——イタリアの陰謀』
関連記事:吉田恵輔監督『麦子さんと』
関連記事:ジム・ジャームッシュ監督『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』
関連記事:『楽隊のうさぎ』鈴木卓爾監督インタビュー
関連記事:アルフォンソ・クアロン監督『ゼロ・グラビティ』
関連記事:高畑勲監督『かぐや姫の物語』
関連記事:松林要樹監督『祭の馬』

初出

2014.01.10 13:00 | FILMS