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エドゥアルド・サンチェス監督ほか
『V/H/S ネクスト・レベル』

「誰が編集したの……?」という容れ物

文=

updated 01.21.2014

フェイク・ドキュメンタリー(もしくはファウンド・フッテージ)系のホラーというのには正直なところ食傷気味だった。第一、『パラノーマル・アクティビティ』シリーズのように、きちんと予算がかけられた作品になると、フェイクものが本来持っているうさんくささや得体の知れ無さに起因する面白さも薄まるので、ここのところあまり興味を惹かれなくなっていた。

だが前作『V/H/S シンドローム』は、「誰かが撮影したままで編集すらされていない」というリアルさの追求にはまったくこだわらず、ということは、「本当の話かもしれない」という枠組みにしがみつくことをやめることで、このジャンルないし手法を再活性化させるものだった。

もちろんフェイク・ドキュメンタリーであっても編集されていて構わないのだが、それがホラー・ジャンルである場合、たいていカメラを持っている人間=主人公がエライ目に遭うというお話になるので、今見ている映像が編集されているという事実そのものが、理屈上はその人間が最後まで生き延びたという証拠になってしまうことが多いため、編集されていることと凶事の発生を矛盾無く同居させるためには、一手間必要になる。それなら「撮りっぱなし」という体裁を採った方がラクというものだろう。

しかしこの『V/H/S』シリーズおいては、「ある不吉な場所に残されていた大量のVHSテープを見ていく」というお話が、複数の短編フェイク・ドキュメンタリー作品を束ねる容れ物となり、その上で、「どうやらそのテープを見たらエライことになるらしい」ということになっているため、そこに山積みされたVHSが編集されているということ自体が不穏な意味を帯びるという構造を持っているのだ。要するに、「エ……? これって誰が編集したの……?」というイヤな疑問が、雰囲気をさらに盛り上げることになっている。結果として、個々の作品は、カメラがその場に存在するというルールだけを守れば良く、この手法の持っていたうさんくささや得体の知れ無さがあっという間に復活することとなった。

 

というのが第一作目のことで、その成功を受けた二作目であるこの作品は、必然的により「普通のホラー」っぽい仕上がりになっているわけだが、得体の知れ無さを二作目で醸し出そうとしてもそもそもムリがあるというもの。「ホラー」としての面白さをある程度丁寧に追求するという選択は、正しかったということができるだろう。

ゾンビの頭に取り付けられたカメラがそのまま録画を続けたというエドゥアルド・サンチェス(『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』監督の片割れ)たちの作品や、カルト教団の集団自殺とその後訪れる怖ろしい出来事に居合わせる『ザ・レイド』のギャレス・エヴァンス作品など、なかなかに粒が揃っている。また、ジェイソン・アイズナー(『ホーボー・ウィズ・ショットガン』監督)の手がけた、子どもたちがいたずらをしかけているうちにエイリアンに襲撃されるという作品など、いたずらパートの子ども演出が見事で、実はリリカルなキッズものを撮らせたらいいんじゃないかなどと関係のないことまで考えさせられたりした。

とはいえ、なんの話なのか全く知らずに見るというのがいちばん楽しめる方法なので、上述の内容はすべて忘れてもらいたい。

☆ ☆ ☆

 

『V/H/S ネクスト・レベル』
1月24日(金)ヒューマントラストシネマ渋谷ほか 全国ロードショー!
オフィシャルサイト http://vhs-horrormovie.com
配給:クロックワークス
(C)Copyright 2013 8383 PRODUCTIONS LLC

 

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初出

2014.01.21 09:30 | FILMS