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孤独のガチャガチャ5

荒川区西尾久「あだちや」編 その一

文・写真=

updated 02.17.2015

もう2月も中旬ではありますが、明けましておめでとうございます。本年も何卒よろしくお願いいたします。さて、2話目(連載5回目)の孤独のガチャガチャです。前回から随分と時間が空いてしまったように思われますが、完全に気のせいです。とりあえず気を取り直してください。

私の住まいは、東京都荒川区にある「尾久(おぐ)」という全国でも指折りの非オシャレスポットです。まるでボディーブローでも食らったときに吐く嗚咽のような語感ですが、後からじわじわ効いてきたりしませんので心配無用です。時折、業界人を気取ってテレコにして「久尾(ぐお)」などと呼ぶお調子者もいるようですが、今度は延髄斬りを浴びたときに吐く悲鳴みたいになるだけという、なんとも手の施しようのない痛い町です。「東京住みたい街ランキング」といったアンケートでは、吉祥寺や代官山などと肩を並べて、いえ、くるぶし辺りから遥か彼方を見上げて、ベスト20000くらいにはランクインするのですが、残念ながら殆どの方はご存知ないでしょう。

大都会東京と鶴舞う形の群馬県を結ぶ名物列車JR高崎線の「尾久駅」があるため、多少の知名度があっても良さそうなものですが、一日の乗車数が約8000人と、東京ドーム7分の1杯分程度しかないため、あまり効果は無いようです。ちなみに、高崎線の中では埼玉の片田舎にある「北鴻巣(きたこうのす)駅」と同程度の乗車数で、23区内のJR駅の中で下から3番目に少ない上に、両隣である上野駅(181000人)、赤羽駅(89000人)が文字通り桁違いに多いため、尾久駅の劣勢がいっそう際立っています。今から80年以上前、世界恐慌の影響で上野や赤羽が政情不安に揺れるなか、どさくさに紛れて尾久駅は開業されました。成り立ちを見ると、シリアとイラクの間隙を縫って登場したイスラム国にそっくりですが、尾久駅にカリフは存在しませんのでご安心ください。

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赤羽・上野住民から邪魔者扱いされ、常に不要論がくすぶっておりますが、日本一の不要駅、東海道新幹線「岐阜羽島駅」の戦略を参考に、尾久氏という架空の政治家の影をチロチロさせることでなんとか消滅から逃れているとかいないとか、そんなこと完全なデマだとか言われています。岐阜といえば何と言っても織田信長ですが、せっかくなら、わずか2500人という兵力で25000人を率いる今川義元を破った桶狭間の戦いにあやかり、逆に赤羽駅を消滅に追い込むくらいの気概を見せて欲しいものです。

ちなみに、この尾久駅ですが、実際は尾久にはありません。住所は北区昭和町にあり、駅が開設される当時は「尾久」の方が知名度として高かったという旧国鉄職員の独断と偏見により命名されたようです。まあ東京ディズニーランドが舞浜にあるようなものと思っていただければ、色々と差し支えあるでしょう。いずれにせよ、その後の尾久の認知度を考えると、旧国鉄職員の先見の暗に頭が下がる思いです。

また、地名としては「おぐ」という発音で「く」が「ぐ」と濁るのですが、なぜか駅名は「おく」となっています。私も引っ越し当初は「カッコつけてんのかな」などと邪推したものですが、こちらも旧国鉄職員によるうっかりで、「おぐ」をただの訛りだと勘違いしたため、気を利かせて「おく」と名付けたそうです。なかなかふるった理由ですが、当時の国鉄職員は全員、植田まさし先生の描かれた漫画だったのでしょうか? ちなみにこちらについては、荒川区の区報に掲載されていましたので、ちょっとご紹介します。

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あらかわ区報Jr. 平成18年1月17日版より引用

正直、「おぐ」か「おく」か、などより、こんな問題が荒川区に関する質問の1位となっていることの方がずっとニュースです。これより他に目を引くものがなかったのでしょうか?荒川区の広報課はこんな区報など書いていないで、耳が聴こえないふりをして名曲を作るとか、万能細胞を捏造するとか、もっとビシビシと質問が飛んで来るような企画を考え、区のPRにまじめに取り組んで欲しいものです。