孤独のガチャガチャ

千代田区秋葉原「世界のラジオ会館1号館」編その二
煩悩の階段を踏みしめ

文・写真=

updated 06.09.2014

さてレディオ会館、失礼、ラジオ会館ですが、ここは8階建てのビルで、フィギュアがところ狭しと並んでいます。ガチャガチャは各フロアの階段脇に、フィギュアに遠慮するような佇まいで、ひっそりと置いてあります。ちなみにこのビルはエレベーターもありますが非常に使い勝手が悪く、エスカレーターもないため、私はいつも階段を使います。噂ではこの階段は108段あり、一段登るごとに煩悩を懺悔する仕組みになっているとか、そんな噂は全然ないとか言われています。私は秋葉原に来ると、時折、思い出したようにここに足を運ぶのですが、自分の中にある仏がここへ導いているような、そんなこと全然ないような、不思議な気分になります。

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大概、大人しそうな一人客か、声の高い早口でしゃべる男ばかりの集団などがたむろしていますが、休日には、子連れの家族や若いカップルなんかが和気あいあいと楽しそうにガチャガチャに興じていて、見かけるとなんだか遠慮してしまいます。軽く落ち込み、やがて敵意へと思いを募らせるのですが、まさに煩悩との戦いがここにあるのだと身を引き締めつつ、「憎」、「欲」、「羨」……と、自分に負けないように煩悩の階段を一段ずつ登り始めます。

毎回、目についたものを何となく買う、というのが私のスタイルですが、とりあえず一度購入したら、出来る限りコンプリートするまで買い続けます。最近は1個400円とかする商品も多く、懐的にもなかなか辛いものがあるのですが、同世代の連中が車やゴルフにつぎ込んでいる額を考えれば、この程度の金額で負けてはいられません。いや、別の意味で完全に負けてはいるのですが。ちなみに、一つの商品をコンプリートするまでに最もお金をつぎ込んだのが、「ドロヘドロ」という漫画のガチャガチャです。

かなり精巧な作りにも関わらず、全身ではなく首しかないので、身体まで予算が回らなかった感じが気に入って買ったのですが、危うく私が首をくくりそうになりました。「恵比寿」というキャラクターの首がいっこうに出ず、4000円を越えたあたりから、死に体になり、危うく吐きそうになりました。目の前で次々に消えて行く100円玉に心が折れそうになりましたが、203高地で数万の将兵を失いながらも、ロシアの旅順要塞を制圧した野木将軍の心境に自分を重ねることでなんとか持ちこたえ、激闘7200円(私は貧乏なのでこれが精一杯なんです)で、見事「恵比寿」の首級をもぎ取りました。

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