孤独のガチャガチャ

千代田区秋葉原「世界のラジオ会館1号館」編その一 フィギュアではなく

文・写真=

updated 06.05.2014

キーボードが壊れました。うっかり鍋焼きうどんを丸ごとこぼした上に、鍋を叩き付けてしまっただけなのですが、最近の機械は軟弱で困ります。一応、水道水で洗い流し、見た目は鍋焼きうどん前に戻しましたが、相変わらずの無反応で、どうやら完全に壊れたようです。鍋焼きうどんも食べられず、結果的にキーボードと相打ちになったわけですが、この二つの戦力が互角だったとは知りませんでした。

近所にキーボードを扱っている電気屋もないので、結局、秋葉原まで行くことにしました。初めて秋葉原に来たのは大学生の頃で、引っ越しのアルバイトをしていたときに、事務所がここにあったのでしばらく通っていました。当時の秋葉原には、なぜか駅前の広い敷地にスケボーリンクやバスケットコートがあり、この街には似合わない、おしゃれな若者がたむろしていました。私も若者でしたが、おしゃれではなかったので家具を滑らせたり、ダンボールを投げたりしていました。

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キーボードはすぐに見つかり、あっさりと目的を果たしてしまいました。すぐに帰宅しても良かったのですが、なんとなく「世界のラジオ会館」に行ってみることにしました。「世界のラジオ会館」は随分昔からあり、秋葉原の名物となっていますが、後発の「世界のナベアツ」のインパクトに侵食されたのか、なんだか間抜けなネーミングとなっています。

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ラジオ会館にはいくつか店舗があり、私が足を運んだのは1号館です。ここはラジオなどほとんど置いておらず、ビル全体がフィギュアで埋め尽くされているため、実状は「フィギュア会館」です。壊れかけどころか、完全にネーミングが崩壊していますが、電波な人が経営しているのか、改名される様子はありません。そんなラジオ会館に行く私の目的はフィギュアではなく「ガチャガチャ」です。

ガチャガチャとは、円球型のカプセルに入った玩具を購入する自動販売機で、硬貨投入口へ硬貨を入れて、ハンドルをぐるりと回すと、上部の透明なケースに入ったカプセルのうち、ひとつが無作為に出てくるという、文字で説明すると味もそっけもない機械のことです。これ以外にも様々なタイプがありますが、ハンドルを回すと出口からポトリとカプセルが出てくるという、地球の重力に依存したつまらない仕組みである点は一緒です。日本では1970年代に普及したそうですが、基本的な仕組みは当時からほとんど変わっておらず、あらためて「重力ってすごいんだな」と感心させられます。

ちなみに「ガチャガチャ」は通称で、正式名称は「ガシャポン」といい、これはバンダイの商品名です。他のメーカーも販売していて、総称を「カプセルトイ」と言いますが、そう呼んでいる人はあまりいないようです。いわゆるひとつのデファクトスタンダードというやつです。「ガチャガチャ」は「ガシャポン」からの派生のようですが、他に「ガチャポン」や「ピーカップ」、「ガチャピン」なんて呼ばれたりもしていて、地域や世代の違い、ダジャレのセンスなどで呼び名が変わります。ちなみに私の地元では「ガチャガチャ」でした。