sanpo_okachimachi_03_01

散歩の凡人18 御徒町その三

暦の上ではディセンバー

文・写真=

updated 03.02.2015

御徒町駅から上野駅に向かう高架下は山手線随一の活況を呈している。言わずもがなのアメ横である。少年時代、凡人は「POPEYE」を愛読していたから、このあたりのアメカジ系ショップにはちとうるさいのだ。……というのは真っ赤なウソであるが、ちょうどアメリカ製のブーツが欲しかったから、靴屋をのぞいてみることにする。

sanpo_okachimachi_03_02

御徒町駅北口の横断歩道を渡ると、頭上にアメ横と書かれた文字看板が掲げられている。この手前を右手に入ると丸福靴店がある。ここでレッドウィングのアイリッシュセッターを買うつもりだったのに、財布の中には30000円、値段を見たら35000円程度。ううむ。予算オーバーで早々に諦める。丸福にはバスのローファーやトップサイダーのデッキシューズ、クラークスのデザートブーツなど定番が並んでおり、アベノミクスの恩恵をいまだこうむっていない凡人は、こうした安価で履きやすい靴を愛している。丸福の良いところは試し履きの際、至極真っ当なアドバイスを行ってくれるところで、靴屋たるものかくあるべしといつも思う。創業は1959年(昭和34年)。半世紀以上も営業しているそうである。

sanpo_okachimachi_03_04

欲しいものが買えず出鼻をくじかれた感があるが、アメカジならばアメリカ屋ものぞかねばならない。こちらは創業1970年(昭和45年)。気のせいか店舗も増えているようで、なかなか繁盛している様子である。とはいえ、いま特別に欲しい衣類もないから、店内をひやかすだけにとどめる。アメリカ屋の次は中田商店でミリタリーグッズをチェックしよう……と気がついたら凡人の中の少年が目覚めそうになり、いかんいかんと慌てて封印。

sanpo_okachimachi_03_05

アメ横の真ん中には下谷摩利支天・徳大寺がある。ここは1階部分は商店、2階部分が仏閣という不思議な構造で、同じ建物なのか、はたまた別の建物なのか、外見からはよくわからない。階段をのぼると境内。参拝者の姿が三々五々。隣の建物にはスポーツ用品店ジュエンの壁面広告がデカデカと掲げられていて、寺社建築とのミスマッチに驚いてしまうが、摩利支天の勝守は勝負に「勝つ」ということで運動選手にも人気らしいから、これはこれで需要と供給のバランス(?)が取れているのだろう。なお勝守は品切れであった。

アメ横といえばアメ横センタービルである。2009年頃、アメ横女学園の劇場「東京EDOシアター」が入っていたが、いまはもう撤退したようである。凡人は彼女らのヒット曲「暦の上ではディセンバー」が好きであった。2014年には「アメ横アイドル劇場」が誕生したそうで、どんなアイドルが出ているのだろうと公演スケジュールを見てみたら、寂しいことに2015年1月は公演が3つのみ。同劇場のfacebookも更新が途絶えたままである。こんなところでアイドル業界の厳しさを感じてしまうとは。ちなみに山手線を挟んだ反対側には蓄晃堂という中古レコード店があり、店頭には1970年代から1980年代にかけて活躍したアイドルのシングル盤が沢山並んでいる。ジャケ写の中に封じ込められた10代の女の子たち。笑顔よ永遠なれ。

sanpo_okachimachi_03_03

話をアメ横センタービルに戻す。ビル1階にケバブ屋がやたら増えた印象がある。「モーゼスさんのケバブ」がいちばんの人気店らしく3店舗、このほか「カフカス ケバブ」と「ジャンボドネルケバブ」がある。店の前を歩いていたら「兄貴! ケバブ大盛りにするよ!」と声をかけられ、まさかトルコ人のあんちゃんから兄貴呼ばわりされる日が来るとは夢にも思わなかった。昼飯にひれかつを食べたので、ケバブはまたの機会に。

凡人は散歩の合間に喫茶店でくつろぐことを愛する者である。アメ横には「ギャラン」と「丘」、二つのお気に入りがあり、さて今日はどちらに入ろうか。

sanpo_okachimachi_03_06